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カカシの人生で1番最初の記憶は父の背中に負ぶわれて見た夕暮れの景色だ。
右足に付けた手裏剣ホルダーが酷く重たかった。あの脱力感は恐らくチャクラ切れだったのだろう。父は意識して背中にチャクラを集めてくれている。とても温かい。ベスト越しにそれを感じた。父がいつも背中に負うていたチャクラ刀をその時父がどうしていたかは覚えていない。今思い出せる中では父はいつもそれを負うていたから、それはとても異質な記憶だ。
あるいはそれはもしかしたら、本当の記憶ではないのかもしれない。何があって父に負ぶわれていたのか、良くは思い出せないのだ。恐らく修行中にチャクラ切れを起こして父が運んでくれたのだろう、と推測はできるが、それも都合のいいように考えただけかもしれない。
父がその時何か言ったか、自分が何か言ったか、それが何処だったのか、どんな季節だったか、何も思い出せない。ただ覚えているのは、父の温かいチャクラと、大きな美しい落日であった。
それは靄がかかったように定かでない記憶であるが故に、現実で見るよりも遥かに美しかった。やがて父が死に、それ以上の父との記憶が蓄積されないようになると、最早見ることのできないものとして、益々その記憶の中の夕日は美しく思えた。
それから成長した後も、忍びの活動時間に入る合図である夕日をゆっくりと眺めるなど有り得なくなり、ふと気紛れに見ようとも、任務前の張りつめさせた精神で感じることなど何らない。
だから、記憶は何かに塗り替えられることなく、カカシにとって夕日は常に、父の背中と郷愁と喪失の痛みを思い起こさせた。
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