それから、狂おしい長い時間が流れた。
主人のチャクラが僅か残っていたのか、私は変わらずそこに心を、あるいは魂を残していた。
主人が心を縛った男は、私に主人の無事を尋ねた。
答えることなどある筈のないことを知りながら、何度も問うた。
そしてその度に泣いた。
主人の居場所は私には分からない。そのように意図された式であるからだ。
主人が死のうとも、私の方へは何の影響もない。
しかし逆にいえば、主人が生きていても、私には分からない。
一縷の望みを、私は抱いていた。
そうでなければ、余りにも酷い。救いがない。
主人を想って泣く男も、踏み躙られた私の生も。
私は元々は主人の命を守る為にある。
守り札として生まれた本来の姿を思い出して私は祈った。
そして――主人は帰った。
届けられた祈りは、私のものであったのか、それとも男のものであったのか。
それは分からない。
どちらにせよ、祈り通りに、主人が生きて帰って来た。
男は、主人の姿を見て、先ず主人の頬を張った。
そして「酷い人だ」と主人を詰った。
それから、「無事で良かった」と泣いた。
男は私のしたいことを全てしてくれた。
だから私は男の手の中で、今度こそ使命を終えたことを確信した。
これから彼らは互いが命を繋ぎ止め合い、守り札となるだろう。
そして私は二度と、赤い鳥として生を受けることはないだろう。
私の踏み躙られた生は、決して幸福なものではなかったが、それを思えば私は満足した気持であった。
こうして、私は二度の生を終えた。