○月×日 晴れ
丸一日任務もない、待機でもないかんぺきな非番という珍しい日だったので、イルカ先生を観察することにした。
夜明け前から、イルカ先生の部屋の前の電線にて待機(見られないように術を使って姿を隠す)。
イルカ先生が寝ているのが窓から良く見える。
(なんであの人はカーテンをつけないんだろう……)
朝6時。
目覚まし時計が鳴る。イルカ先生起床。
と、思いきや、目覚ましを止めてから、ベッドから動かない。
右腕を目覚ましに伸ばし、正座っぽい格好で頭を垂れたまま動かない。
動かない。……動かない。
どうやら器用にその体勢で二度寝したらしい。
6時15分。
突然イルカ先生がベッドの上に立ち上がる。
勢い余って電灯に頭をぶつけたが、まだ目は閉じている。
6時20分。
イルカ先生ベッドから降りる。とうとう起床。
時が止まってしまったんじゃないだろうかと思うくらい長い欠伸。
6時25分。
朝食。
眠気覚ましにコーヒーを飲みながら朝食準備。
朝食に入れようとしたしょうゆを間違ってコーヒーに入れてしまうが、気付かず飲んで悶絶。(その代わり、すっかり目が覚めたようだ。もしかしたらこれが彼のやり方なのか?)
もの凄くめんどくさそうに作っていた朝食は、ねこまんま(白米に味噌汁をぶっかけたもの)と、素うどん、生卵、トマト(丸ごと)、だった。
6時35分。
片づけ後、ランニングに出かける。しょうゆコーヒーは放置。
約10kmのランニングは忍びとしての基礎体力の維持の為であろう。特筆すべきことはなし。
7時。
風呂及び身支度。
風呂後、パンツ一丁で窓の前に立って、しばしたたずむ。何やら満足げ。
ちなみにパンツはトランクス(青の水玉)。
その後、干しっぱなしだった支給服を取って着用。が、すぐに脱いでベッドに放る(どうやら寝巻着にしている古いものだったらしい。遠目から見ても毛羽立っていた)。別の支給服を着用。
枕元に置いてあった額当てを着ける(前髪の寝ぐせを隠す)。
7時30分。
アカデミーへ出勤。
残飯を漁るカラスの横をそおっと通る。白いノラ猫にあいさつ。
〜12時30分。
アカデミーは防犯(・防忍)が厳しいため、観察を断念。
遠くから眺めた限りでは、先生・生徒共に元気に授業をやっている。良く笑う。生徒も笑う(先生が笑われている)。
12時35分。
小走りで食堂へ向かう。
俺は接触を試みる。すると先生が遠くから「席取っておいてください!」と叫んだ。ので、お茶だけ持って席を二つ分確保。
先生は食券売場でものすごく悩む。
後ろの人(たぶん受付仲間)が背中をツンツンする。が、悩む。真剣な顔で悩む。……悩む。(そういえば、今は月末である)
しばし後、カッと目を見開き、ボタンを指がしなるくらい力強く押す。お値段とボリュームの間をとったB定食に決断したらしい。
おばちゃんと談笑。キャベツをこころなしか多めに入れてもらう。
俺の確保していた席にやってくると、「ありがとうございます」と俺に礼を言いながら、勢いよく割り箸を割る。隣に座っていた男が先生の腕を上手く避けた(慣れているらしい)。ちなみに先生の箸は必ず正しく真っ二つに割れる。
入れ替わりで俺も定食を購入し戻ってくると、先生は半ば食い終わっていたので、俺も急いで食う。
13時。
昼食終了。
腹ごなしにアカデミーの裏の野っ原を散歩。
真ん中辺りで、どこからかミカンを取り出し、半分くれる。一緒に食べた。
13時30分。
アカデミーへ戻る。以降16時まで観察を断念。
時々、居眠りしていたらしい生徒を怒鳴る声が聞こえてくる。
16時。
報告書受付へ向かおうとした所で、生徒に捕まる。
その子が何事か一生懸命話すのを、一生懸命聞く。
最後に、どこからかアメを出してあげる。(謎である)
16時10分。
受付業務開始。
夕方なので上忍師が多い。ので、俺の存在に気付いて首を傾げる。
(イルカ先生は全く気付いていないので問題なし)
18時。
人が減って来たところで、「腹減ったな……」と呟く。
なぜか胸騒ぎがして額当てを上げておいたら、先生がアメを取り出して口に放り込んだ。
かなり素早い動きだったが、写輪眼のおかけで見切れた。ありがとう、オビト。
ちなみにベストの一番右の巻物ホルダーがアメ入れだった。
19時30分。
受付業務終了。
アカデミーに寄る。仕事を持ち帰るらしい。
19時35分。
何事かふんふん歌いながら歩いていく。
その先にバナナの皮発見。まさかな……と思いつつ、一人ハラハラする俺。
が、イルカ先生、ギリギリで気付く。一安心。
ひょいとまたぎながら、ニヤニヤしていた。滑って転ぶのを想像したのだろう。
(しかし実際バナナの皮で転んだ人間を、誰も見たことがないだろうなぁ)
19時40分。
我慢できなくなって接触を試みる。
笑顔で接してくれた。飯の相談。すぐに一楽に決定。
19時45分。
一楽到着。
テウチさんと少々雑談後、先生は味噌チャーシューを注文。
ギョウザとビールは? と聞くと、「まずは全身全霊でラーメンに向かい合うので」と言われた。
ラーメンが出てくる。元気良く「いただきます!」。いつも通り、真っ二つに割り箸を割る。(勢い良く隣の俺に飛んできた腕及び箸の片方は、背を反らせて避けた。俺も慣れている)
以後、しばし無言。
20時。
ラーメン完食。スープさえ飲み干した者が約30分の1の確率で見ることができるという、伝説の一楽マークを丼の底に発見。自慢しただけで俺には見せてくれない。非常に満足げ。
ギョウザとビールを注文。
のんびり飲み食いしながら、今日の出来事報告会。(俺の方は報告できることがなくて困ったが、勝手に任務だと勘違いしてくれたので助かった)
20時45分。
一楽を出る。
先生の家に一緒に帰宅。
入った途端、放っておいたしょうゆコーヒーを捨てる。それはもう勢いよく。余程まずかったらしい。
21時。
風呂。
先生が入っている間に、こっそり右端の巻物ホルダーを見てみる。
アメとキャラメルがいっぱい入っていた。
21時10分。
つまらないので風呂を覗く。
桶を投げられた。
(今日一日観察していたのには気づかなかったのに、風呂に来たのは何故分かるのだろう)
脱衣所でパンツだけ確認。緑の水玉。
21時30分。
先生が風呂から出る。 ほかほかで満足げ。
入れ替わりで俺が入る。(先生の残り湯を堪能)
21時40分。
俺が風呂から出ると、先生はテレビを見ながらビールを飲んでいた。
先生は常々缶ビールは直で飲む方がうまいと主張しているので、グラスはなし。
間接ちゅーを狙って、一口下さいとねだったら、「絶対いやだ」と言われた。
(ビールをあげるのがいやなのか、間接ちゅーがいやなのか……)
22時。
持ち帰った仕事を始める。
23時30分。
突然ぼきっという音が聞こえたのでなんだろうと思ったら、イルカ先生が鉛筆を折る音だった。
頭が垂れている。寝ているらしい。
時々びくっとなって起きては、また寝て鉛筆を折る。
23時45分。
4本折ってから、諦めて書類を片付ける。
ふらふらしながら洗面所へ。
歯磨き。先生はダラダラ垂らす派。(我慢してオエッとなるのが嫌だから)
23時50分。
イチャパラタイム。
と思いきや、先生普通に寝っころがる。
ちょっとだけ、とねだったら、「眠いです。ひとりでどうぞ」と言われた。
「じゃあオカズにするんで裸になってもらえますか」と聞いてみる。
拳を覚悟して構えていたが、良く見ると先生はもう寝ていた。
その間5秒。さすがだ……。
23時55分。
良く寝ている。
抱きついて寝ることにした。拒絶なし。先生は寝ていると静かだ。
と、思いきや、鼻が詰まっているのか、微かにぴーぴー鳴っている。
苦しそうなので口を開けさせようと指を突っ込んだら、噛まれた。(だよねー。忍びだし)
24時。
どうしても今日つけ回したことを謝りたくなって「ごめんね」と囁いた。
明日ちゃんと謝ろうと思ったら、先生はちょっと目を開けて「もうやらないでくださいね。気持ち悪いから」と言って微笑った。
いろんな意味で泣けた。
抱き合って眠る。
俺はイルカ先生が大好きだと再確認。
観察終了。
※覗きは犯罪です。