何か馴染みのある匂いがして、目が覚めた。
だが、目を開けると、そこは見知らぬ部屋だった。白い。一面に白い部屋だ。
「どこだ、ここ……」
イルカは起き上がろうとして、手首の違和感にも気付いた。鎖である。手首から、寝ているベッドの横の柵まで長く、鎖が伸びている。
「起きた?」
声がして、はっと顔を向けると男が横に立っていた。
今度は覚えがあった。いつもは覆い隠している顔が晒されているから見慣れないが、彼は、はたけカカシだ。
だが何故彼がここに? 混乱するイルカに対して、彼は薄く笑った。
「おいで」
言って、イルカの手首の鎖を外す。しかし解放はされず、後ろ手に括られた。そのまま腕を取られて、立ち上がらされる。
その時ようやく、イルカは自分が一糸も纏っていないことに気付いた。
それで、一番に、行き違いがあって、里から何かしらの嫌疑がかけられているのかも知れないと考えた。更に、カカシに連れられて行った先はバスルームで、拷問という文字が頭をかけめぐる。水責めだ。
「どういうことですか、カカシさん! 何故こんなことに!」
カカシはイルカに跪くよう促して、黙ったまま答えなかった。シャワーを手にし、そのヘッド部分を取り外している。
「俺は何か、疑われているんですか」
やはり答えない。代わりに、ホースのような状態になったシャワーから、水音がした。その水に手をやったカカシの横顔が、凍ったように固まっている。ぞっとした。彼は手を抜かないだろう。死なぬ程度に、だが死ぬ方がマシだと思う責めを遂行するに違いない。
「信じて下さい! 俺は何も、里を裏切るような真似は、何もしていません!」
イルカの必死の声が、バスルームに響く。
今度も、答えはないと思われた。しかし、カカシは、「分かってるよ」と、そう言った。
「――え…」
意味を理解できない内に、カカシの手が伸びた。首の後ろを掴まれて、頭を床に押し付けられる。自然、高く持ち上がった尻に、ぬるい湯がかかった。
「何……」
イルカは問おうとして、声を失った。
ぐ、と尻を割り開かれ、そこにシャワーを押し付けられたのだ。体内に、湯が、入ってくる。
有り得ない状況と、酷い異物感に、イルカは激しくもがいた。だがさして苦も無さそうに、押さえつけられてしまう。
「じっとして。すぐ終わるから」
言葉通りに、間もなく解放された。
イルカは反射的に下腹に力を込めて、上体を起こすと、カカシから逃れるように後ずさった。
「なんで…これ…何なんですか…」
震える声でカカシを見上げる。カカシは目を細め、ゆっくりとイルカの方へ歩み寄った。
「ねぇそれより、腹痛くない?」
確かに、じわじわと痛む。腹に無理に水分を入れられたのだから、当たり前だった。イルカは答えず、歯を食い縛って尻に力を込める。その様を、カカシがじっと見ていた。
段々に、痛みは酷くなる。イルカは腹を丸めて耐えた。
「トイレはあっちだよ」
優しげな声で言われて、顔を上げると、カカシが背後を指差している。
だが、イルカが立ち上がろうとすると、額を手で押さえつけられた。
「でも行く前に――舐めて」
イルカはその言葉を理解できず、ただカカシを見る。
カカシは微笑った。そして、イルカを押さえたまま、片手で服をずらし、ペニスを取り出す。まだ柔らかいそれの根元を持ち上げ、イルカの鼻先に向けた。
イルカは当然、顔を反らし、拒否を示した。
その頬に、カカシはぐりぐりとペニスを押し付ける。
「ほら、早く」
口元に滑らせて、唇を割ろうとするそれは、温かく、段々芯をもっていく。イルカは嫌悪を持って瞼と口を強く閉ざした。
「苦しいでしょ。一舐めで良いよ。ね、舌出して」
声は優しかったが、だからこそ理解できなかった。
一体何が起こっているのか、冷静に考えようとしても、腹の痛みがそれを邪魔する。力む身体が小刻みに震え、額に嫌な汗が伝った。呼吸が荒くなるが、口を開けば、カカシを受け入れたと思われてしまう。唇を噛み締めて、耐えるしかなかった。
「…仕方ないな」
ややして、そうカカシは呟くと、イルカの後ろで一つに結わえている髪の根元を掴んだ。
強引に顔を上向かされ、思わず目を開くと、カカシの奇妙に歪んだ顔が見えた。大分固くなったらしいペニスも間近で揺れている。イルカは再び、瞼を力一杯に閉じた。
カカシはもう、イルカの状態は気にしないことにしたらしい。唸り、もがき、苦痛を訴えても、彼は例の優しい声もかけなくなった。
ただ執拗に、イルカの顔中にペニスを擦り付けてくる。頬で裏筋を上下に擦り、張ったカリ首を鼻に引っかけ、先端でイルカの一文字の傷をなぞった。
それは徐々に固く、大きく、熱くなり、濡れた感触を残していく。目を瞑っていても、同じ性を持つイルカには彼がどういう状態か、手に取るように分かった。
だが、屈辱はもはや遠い。その時のイルカは、のた打ち回りたくなる強烈な下腹の痛みと排泄感に、堪える以外の事は考えられなかった。もう何だっていいから、終わらせて欲しい。それだけがイルカの思考を占めた。
「早く…も、はやく…ッ」
無意識に、噛み締めた奥歯の間から、そう言っていた。
途端、頬の上のペニスが跳ねるように動いた。それから、顔の両側を手で挟まれて、激しく上下させられる。
そして僅かして、微かな呻き声と共に、叩き付けられるような激しさで、額に熱い粘液がかけられた。
とろとろと流れ落ちていくその感触に、呆然としながらカカシを見上げる。
カカシは満足気に目を閉じながら、微かに笑っていた。



「ふぅ……」
カカシが呟いて、目を開ける。
そこにはただ、イカ臭い自分の手と、長い賢者タイムだけがあった……



おしまい?










わーへんたいだぁ


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